しあわせ中国

雑誌「foresight」にて「フィクションながら現代の中国をよく描写している」云々と紹介されていたので読んでみた。

政治的な興味から購入したので、面白さはあまり期待していなかったのだが、意外にもひき込まれるストーリー展開と、余計な装飾のないすっきりした文体で、珍しく一気に読んでしまった。一部の伏線を放り投げ、楽園伝説を彷彿とさせるラストに物足りなさを感じはしたが、それでもエンターテインメントとしては充分に楽しませてもらった。一篇の映画のようだった。

内容については、中国の文化的・歴史的背景を知らないため理解しづらい箇所が多々あったが、なんとか現代の(小説の中の)中国人がどのように考えているのか読み取ることができたように思う。そこには私にとり多くの新しい発見があった。飽く迄小説の中の話なので実際にどうかということについては検証が必要だが、可能性としては大いに考慮されるべき項目である。以下箇条書きでメモしておく。ネタバレになるので本書を読もうと思っている人は以下を見ないことを勧める。

 

中国人は自由や民主主義といった価値観を「普遍的な価値」とは考えていない。

中国のシステムが「ポスト民主主義」の地位を占める可能性を考えている。

アメリカ、ヨーロッパと並ぶ「アジア」経済圏・文化圏の、中国を中心とした確立を望んでいる。それは環太平洋の枠からアメリカを排除し、日本と協調することで成立する。

中国人は、「日本人はアメリカに屈服させられた屈辱を感じている」と思っている。このため「日本と協調しアメリカを排除する」というシナリオを描くことになる。

中国人の多くは、過去に日本が中国に対し酷いことをしたと考えている。

 

上記のうち「ポスト民主主義」については、今日foresightで裏付けになりそうな記事を確認した。2013年2・3月号の「Foreign Affairs」(本家、日本版で記事が掲載されるかは未確認)に、副題「ポスト民主主義の未来、中国で始まる」という記事が掲載されたようだ。

http://www.fsight.jp/13897

 

「日本人のアメリカに対する感情」については、中国の掲示板に「日本人は米国にコントロールされていることをどう思っているのか?」というスレッドが立っていたようだ。以下は日本のまとめブログURLである。

http://touaseikei.matomesakura.com/?eid=877

 

また本書を読んでいる途中で、foresightに「『南方週末』の記事が書き替えられる」という記事が掲載された(しあわせ中国の作中でも南方週末の記事が書き換えられていた)などがあった。フィクションながら、リアリティを感じる要素が多かった。

 

しあわせ中国: 盛世2013年

しあわせ中国: 盛世2013年